私は割と野球が好きで、(最近は時間もなくてそうでもないんですが)以前はよくテレビでも野球中継を見てましたし、試合結果なんかもニュースでよくチェックしていました。
そうすると、選手のインタビューの内容とか、いろいろ知る機会があるんですね。そんな中、よく松井秀喜が「甘い球を確実に打つ」というようなことを言っていたのが印象に残っています(松井に限らず、よく聞くセリフではありますが・・・)。
甘い球を確実に打つ
正直なところ、私がこのセリフを初めて聞いたときには、「コイツは何を言ってるんだろう」と思いました。それじゃあ「甘い球が来なければ打てません」と言っているようなもんだろうと。甘い球を打つだけなら素人でもできるんだから、多少難しい球が来てもうまく打ち返すのがプロではないのか、と。
とはいえその重要性は認識しているつもりです。難しい球を無理して打ちにいってもどのみち良い結果が出る可能性は低い訳だし、もっと悪いのは「うっかり甘い球が来たときに、逆に反応しきれなくなる」怖さがあります。また、「甘い球が来る可能性がある」と思って待つのと、「厳しいところに来るかもしれない」と思って待つのとでは、精神的な余裕も違ってくる気がします。
株式投資における「甘い球」
株式投資においての「甘い球」というのは、「景気の上昇局面では株価が上がる」という性質なんだと思っています。景気が良いか悪いか、くらいは日常生活を送る上でも、ニュースなどを見ていてもそれなりに簡単にわかります。各種経済指標などを参考にしつつ、景気の上向き動向を早めに察知し株を買い、景気が鈍ってきたところで株を売る。そうすれば、おそらく好況の中で株価も多少は上がっているでしょうから、その分のリターンは得ることができます。
野球の場合は相手ピッチャーの調子が極めて良く、甘い球が来そうにないときでも打席には立たなければいけませんが、本職で収入のある多くの個人投資家の場合、甘い球が来なそうなときには打席に立たない(運用を休む)という手段が使えます。これはもう、どうしようもないほどに有利な条件だと個人的には考えています。
今は「買い」か
私も 1 ヶ月半前くらいに投資を始め、右も左もわからないまま株を買い、当然のように含み損を抱えています。下げ始めはどちらかというと悲観的な観測が多かった気がしますが、最近は今はかなり割安なので、買うなら今だ、というような論説もよく見かけます。でも、果たして本当にそうなんでしょうか。
おそらく今が格安であるというのはそれなりに真実で、例えば 10 年後に株価が上がっているかと言ったら、おそらく上がっているんだと思います。だから今は相場は不安定だからと、10 年ものの国債なんかを買うよりは、利回りを考えれば株を買うべきなんだと思います。ただ、その資金が 10 年寝かせてられるくらいの余剰資金であるという前提で。
確実な上昇局面でもない展開であまり多くの資金を投資にまわしてしまうと、何かの際に急遽キャッシュが必要になり、万が一売らなければならなくなった場合に、安値で叩き売るハメになる可能性も大いにあります。今はプロの投資家でさえ、極めて予測の難しい大きく相場が乱高下する展開です。その上景気も後退局面で、下がった株価がいつになったら回復するのか、というのはかなり不透明です。数ヶ月で戻るのかもわかりませんが、もしかすると 5 年経たないと戻らないかもしれません。
最近は株安につられてか証券口座を開設する個人投資家も増えているらしいですが、おそらく(私も含めた)素人が、単純に今は安いからと言って株を買うのはリスクの高い行為なのではないか、と思っています。とにかく今は、歴史上でもまれに見る、先行きの不透明な展開です。運が良ければもうかるかもしれませんが、運が悪いと損をするかもしれません。でもそんな判断の手がかりも曖昧な、運任せのものに資金をつぎ込むのは、もはや投資というよりは博打です。勝ったとしても、結果論にしかならないと思います。
強い心
今のように「株安だ」という雰囲気の中で、株を買わないでいるのも、それなりに勇気がいります。また、株を買った後で 1 割とか 2 割値下がりしたときに、焦って買い増したりせずに黙って推移を見守るのも、勇気がいります。タイミングよく利益が出たとして、先の不確定さを考えてさらなる値上がりの目を蹴って利益確定売りをする、というのも、勇気がいると思います。
何が正解だったのかは後になってみたいとわかりませんが、強い心を持って今の相場を見守りたい、甘い球が来るその日まで、満を持して待ちたい、というのが今の私の気持ちです。