妹が携帯電話の機種変更をしたことに触発されて、彼は朝から家電量販店をはしごして価格や機種の調査をしていた。祝日だけあって人の多い店内。特に人の集まりやすい携帯電話コーナーで、前に立って店員に話を聞いている夫婦らしき男女のすき間から、彼は頑張って商品を見ていた。
「高ぇ」
次々に飛び込んでくる1万円を超える価格表示に、彼は目を丸くした。ひっくり返っても携帯ごときに5千円までしか出せないと思っている彼は、彼の前に高くそびえ立つ価格表示を前に、すごすごと去って行った。
為す術もなく肩を落として歩いていた彼に、それは驚くほど突然に彼の前に現れた。彼にとってそれを見るのは初めてではなく、何度か買おうかと思って手に取っては、やっぱり今はやめておこうとそっと商品を戻していた。彼にはお金もないし、それを生かすだけの知識もないと思っていたからだ。
しかしこのとき、それはいつもより輝いて見えた。かつて3つ置いてあった商品は、いつしか1つになっていて、まるで彼に買われるのを待っていたかのように、そこにいた。彼が帰宅したときにそのずっしりとくる感触を袋の中にとどめていたことに、理由を付けるのは難しい。
購入してきたHDDを目の前に、彼はもう衝動を抑え切れなかった。彼女が身にまとっていた柔らかな包装をがむしゃらに破り去り、光り輝く肌をむき出しにした。そして本当は多少の告知をしてから落とすべきサーバをいきなり止め、つながっていたケーブルを一気に抜き去り、中を開いて光り輝くそれを、彼に足りないところに挿し込んだ。
・・・、さて、てなわけで、とにかくHDDを買ってきてRAIDを組もうということになったのだけれども、この作業がまた困難を極めた。とりあえず買ってきたHDDはHITACHI製のSATA, 80GB, 7200rpmで、元から内蔵されていたやつと同じスペックのやつ(全く同じではない)。いつもアクセスの薄い15時あたりからの開始で、当初の予定では17時頃には終わると踏んでいたのだけれども、それでは全然済まなかった。
一応私のサーバDell PowerEdge SC420はBIOSレベルのRAIDコントローラを持っているみたいなので、まずはこれを有効にするところから始めた。なんかとりあえずBIOSのセットアップユーティリティみたいのでRAIDをonにすると、RAIDユーティリティみたいのを起動できるようになって、そこでRAIDの設定をできるみたいだったのだけれども、アレイを作成しようとすると今まで使っていた方のHDDが選択できず、作成できない。マニュアルを見ると初期化が必要とか書いてあるから、仕方ないからバックアップを取ることにする。
バックアップを取るときに、USB接続で使える外付けHDDとか持っていないので、どうしてもネットワーク経由で取らなくてはならない。しかもサーバが動いてると困るので、シングルユーザモードで作業は行わなくてはならない。
というわけで、バックアップは前にもやったようにssh経由のdumpとかでやることにしたのだけれども、シングルユーザモードで起動したあと、なぜかネットワークにつながらない。どこにpingを打っても何も返ってこない。この辺で本当は今日はここまでにしておけばよかったのだが、どうもそういうわけにいかないのが良くも悪くも性分ってもんである。
結局いろいろ調査をして、ifconfigが何も設定されていないのが悪いのだろうというところに行き着く。で、ifconfigを設定してうまくいくかと思ったら・・・いかない。この辺の原因はよくわからなかったが、多分DMZでMACアドレス指定でIP割り当てしてるのにローカルアドレスを指定していたのが悪いような気はする(これやってたとき、ルータもそろってハングしてたし)。
結局そのときすでに16時半とかで、徐々に焦りつつあった私は、サーバをバックアップ先のNetBSD-iMacと直接繋いでifconfig直指定でやることにした。なんかリンクアップに時間がかかるみたいな雰囲気だったけど(アクセス速度を固定しなかったからか)、とりあえず接続可能になってdumpが取れる環境にはなった。
まあ、dumpは適当にレベル0で取るだけなので、楽。サーバ全体の容量もせいぜい2.2GBかそれくらいなので、全部取っても15分から20分くらい。待ってるとそれなりに長いけど。
バックアップを取ったら本丸・RAIDに突入。買収額3000億?余裕余裕。と、思っていたが、そうは問屋が卸さなかった。とりあえずセットアップのためにHDDを初期化。これであとには引き返せなくなる。このときだいたい18時。この時点でかなり嫌な予感は感じていた。
NetBSD 2.99.14時代に作ったCD-ROMでインストーラを起動して、インストールしよう・・・と思った途端にエラーで終了。「インストール」のメニューを選ぶとすぐに、「インストールする場所がない」とかいって蹴られてしまう。
ここで「やっぱドライバがどうとかという話なのだろうか」と思ってDell OpenManageとか書いてあるCD-ROMから起動して、なんかよくわからんけどインストールをして、途中で止まって・・・、と、とにかく焦りと訳わからなさでヤバくなってくる。
それでも19時になったらブラックジャックを見ながらビールを飲みつつ夕飯を食べ始め、コナンまでフルに見てから作業に戻る。この間1時間ほどは、サーバにとって久々の休暇となったはずだ。
この辺でなんとなくこのRAIDコントローラを使ったRAIDは無理臭いし、NetBSDにはソフトウェアRAIDシステムもあるみたいだからとりあえず片側のディスクだけで復旧して、後日そのRAIDにしようという感じになってくる。
そこでシステムセットアップでRAIDを解除して、インストールし直そうとすると・・・、コケる。ヤバい、これはヤバい。サポートに電話しなければいけないのかと思うほどここは焦った。崩したら元に戻らない。それだけはマズい。
で、焦りの中で訳のわからない経過を経た後、結局RAIDユーティリティでRAIDを解除してからセットアップユーティリティでもRAIDを解除して、再インストールに成功。その後初のrestore体験を経て、現在にて復旧する。
HDDを追加購入してしまった以上(ケーブル込みで9千円)、RAID構築は至上命令なので、そのうちNetBSDのカーネルRAIDを試してみる予定。そのうちまたアクセス不能になってるかもわかりませんが、その時は「きっとRAIDだろう」と思って優しく微笑んでください。
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